自由・平等・友愛 ― ただし、フランスでは黒人やアラブ系には当てはまらない?
政治
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自由・平等・友愛 ― ただし、フランスでは黒人やアラブ系には当てはまらない?フランス最高裁が制度的な人種プロファイリングを認めてから1年が経ちますが、黒人やアラブ系コミュニティに対する差別的な対応は今も続いています。
「人種プロファイリングは、フランスやヨーロッパの他の地域に根深く存在する制度的不平等の問題に起因しています。」 / 写真: ロイター
2025年1月30日

パリは『光と愛の都』と称されていますが、その華やかさの裏には、黒人やアラブ系の人々が差別され、『よそ者』や『フランス人として十分ではない』と見なされる暗い現実が存在します。

フランスでは、黒人やアラブ系の人々が 警察による職務質問を受け、身分証の提示を求められ、身体検査や場合によっては全身検査まで余儀なくされることが日常的に発生しています。 その理由は、ただ彼らの肌の色や民族的・宗教的背景にあるのです。

昨年、フランスの最高行政裁判所である 国務院(Conseil d’État) は、法執行機関による人種プロファイリングが「個別の事例ではなく、制度的な問題である」と正式に認めました。

しかし、政府はこの厳しい現実を直視せず、マイノリティの人々が安全に暮らせる環境を整えるための本格的な対策を講じていません。

デ・モントフォート大学の政治学者であり作家でもある アミナ・イーサト=ダース博士はTRT Worldに対し、国連などの国際機関が求める人種プロファイリングの制限に関する勧告が、これまで無視され続けていると指摘しています

「法執行機関による人種プロファイリングは、個々の問題として捉えるのではなく、より大きな制度的な課題の一部として理解する必要があります。」 とイーサト=ダース博士は述べます。

「データによれば、フランスの有色人種コミュニティの人々は、警察に職務質問される確率がフランス人全体の 20倍 にも上ることが示されています。」

特に、黒人やアラブ系の若者や未成年に対する警察の身分証確認は、暴力に発展するケースが多いのが現実です。

最近の衝撃的な事例の一つが、昨年、交通検問の際に アルジェリア系の17歳の少年ナエル が警察に射殺された事件です。 このような事件は、法執行機関と社会的に疎外されたコミュニティとの信頼を損ない、不公平感をさらに深めています。

人種プロファイリングは、フランスやヨーロッパの他の地域に根深く存在する制度的不平等の問題に起因しています。

広がる構造

フランス黒人協会代表評議会(CRAN)の調査によると、本土フランスに住む黒人回答者の 91% が人種差別を経験したと報告 しており、85% はその直接の原因として肌の色を挙げています。

この問題は、特に 公共の場や職場で顕著に見られ、住宅や教育分野でも大きな障壁があることが報告されています。

ムスリムも同様の困難に直面しています。

欧州基本権機関(FRA) の報告によると、ヨーロッパ全域のムスリム回答者の ほぼ半数が日常生活の中で人種差別を経験 しており、その多くは服装、民族的背景、宗教的信条に関連しています。地域ごとに職業的・社会的背景が異なるにもかかわらず、この傾向は共通しています。

また、ヨーロッパで生まれた 4,400万人以上のムスリムのうち、過半数が就職活動時に人種差別を受けたと報告しており、同等の言語スキルや資格を持つ他の応募者と比較して、不平等な扱いを受けていることが示唆されています。

さらに、スカーフなどの宗教的シンボルを身に着けている女性は、職場でより強い偏見に直面 しており、45% が職場での差別を経験したと回答しています。この数値は、2016年の31%から大幅に増加しています。

欧州基本権機関(FRA)の報告によると、住宅を借りたり購入しようとした場合に差別を受けたと報告したムスリムは約35%に上り、2016年の22%から大幅に増加しています。

FRAは、この反イスラム感情の高まりの要因として、中東地域の紛争や、欧州全域で政治家や極右勢力が用いる非人間化を助長するレトリックを挙げています。

デ・モントフォート大学のイーサト=ダース博士も同様の見解を示し、これらの差別的な対応が、植民地支配に根ざした世界的な人種差別構造の一部として深く定着していると指摘しています。

「黒人やアラブ系/ムスリムの人々に対する非人間化を、人種差別的な構造を通じて疑似的に正当化することにより、法執行機関は有色人種のグループを不当に標的にしながらも、 ほぼ何の影響も受けることなく 行動できる状況が生まれています」

「目立つ宗教的シンボル」の禁止

人種プロファイリングの影響は、警察の取り締まりにとどまりません。イーサト=ダース博士 は、制度的人種差別が社会的に疎外されたコミュニティに多層的な影響を与えている ことを強調します。

「フランスでは、人種的に差別されやすいコミュニティは、教育の場から排除される可能性が高く、たとえば、学校での『目立つ宗教的シンボル』の禁止は、特にムスリム女性に不釣り合いな影響を及ぼしています。また、プロファイリングによって就職や住宅市場からも排除されています。」 と彼女は述べています。

このような排除の形態は、社会的・心理的にも深刻な影響をもたらし、不平等の連鎖をさらに固定化させます。司法制度への不信感があるため、実際に訴えを起こす被害者はごく少数にとどまっています。

イーサト=ダース博士は、米国で起きた黒人男性ジョージ・フロイド氏の殺害事件や、ベルギーでのモロッコ系19歳の少年アディル氏の警察による射殺事件などの著名なケースを引き合いに出し、フランスの人種プロファイリングが根深い問題であり、正面から対処すべき課題であると指摘します。

「こうした事例は、黒人やアラブ系の人/ムスリムが、世界的に見ても人種差別的な警察の取り締まりの標的となりやすく、その結果、命を奪われるなど深刻な事態に至るケースが多いことを浮き彫りにしています。」 と彼女は述べています。

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